企業が事業価値の向上を図る上で重要になってくることとして、「事業がどの方向に向かって進んでいくのか」という方向性の明確化が挙げられます。様々な考えを持つ従業員が集まっている企業では、その企業の独自性や事業の独自価値と合わせて、進むべき方向性を従業員が共通の認識として共有しておく必要があります。
そこで大事になってくるのが、ビジョン・ミッション・バリューの設定です。
会社や事業が目指すべき姿を見える化し、社内を共通認識化させるために必要な3点です。この3点を設定し共有することで、従業員のモチベーションが向上し行動が変容していきます。
その結果として、企業の存在価値も高まります。
ビジョン・ミッション・バリューを設定し、社内で共有していく取組みをインナーコミュニケーション(インターナルブランディング)と言います。
ビジョン・ミッション・バリューと言っても言葉の意味合いが、使う人によって異なっている場合があります。
そこでこのブログでは、改めてビジョン・ミッション・バリューの意味や設定するプロセスを紹介します。
参考にしていただければと思います。
ビジョン・ミッション・バリューは、もともとは現代経営学の権威ピーター・F・ドラッガーが「企業の経営方針」として提唱したものです。
企業を取り巻く環境が目まぐるしく変化する現在、多くの企業で経営方針の重要性が高まっています。経営方針を明らかにすることは、従業員に対しても顧客や社会に対しても、さらには株主に対しても、会社の目指す方向を共有する上で重要な取組みになります。
企業の経営方針を共有していくうえで、「ビジョン・ミッション・バリュー」の設定が欠かせません。
ここでは、ピーター・F・ドラッガーの考えをベースに、現代的な解釈を加えてそれぞれの言葉の意味合いを整理していきたいと思います。
ビジョンとは、企業や事業が「実現すべき社会像や事業増」です。
社会や顧客の喜びのために、自社や事業が将来的にどのような存在になっていくべきかを描いたものがビジョンです。
自社や事業の将来像を設定し、それを従業員と共有することで、複数の部門や多数の従業員を同じ方向に向かせることができます。
また、将来像を共有することで、自社や事業へのエンゲージメントを高めることができます。
学生など就職希望者に示すことで、近い価値観を持つ社員を採用することも可能になり、リクルーティングが円滑になります。
ビジョンについて企業理念とどう違うのか、という質問を受けることがあります。
ビジョンは10年後とか20年後といった中期的に実現させるべき将来像として設定するのが望ましいと考えています。そのくらいの期間でないと、抽象的過ぎて自分ゴト化することが難しくなるからです。
一方、企業理念はもっと長期的な意味合いが濃くなってくると考えられます。
場合によっては、その企業が存在する限り大事するべきものと位置付けられます。
そういう観点からすると、ビジョンは定期的に見直すべきものです。
創立50周年や100周年といったタイミングでのビジョン設定に関するご相談が多いのも頷けるところです。最近では10年ごとに見直す企業も増えています。
ミッションは、「果たすべき使命」と言い換えることができます。しかしながら、この解釈ですと少し分かりづらいところがあります。
ミッションは「ビジョンを実現するための具体的な指針や目標」と考えるべきです。
10年後に実現する将来像として設定した「ビジョン」を実現するために、いつまでに何をやっていくのか、といった具体性を伴ったものが「ミッション」です。
つまり、ビジョンが10年後のゴールポイントだとすると、そこへの道程がミッションと言えます。
企業ビジョンの実現のために、A部門は〇〇をミッションとして掲げ、B部門は△△を自部門のミッションとして掲げるといったように、企業によっては一つの企業ビジョンに対し、部門ごとにミッションを設定している会社もあります。
さらには、従業員一人一人のミッションを設定する会社もあります。
いづれにしても、ビジョンの実現に対し、何をするのかを具体化したものがミッションです。
バリューは「価値」と訳すとおり、企業や事業の価値ということになります。
つまり、その企業や事業がもつ固有の価値です。言い換えれば、「独自価値」「独自性」「企業らしさ」がバリューに当たります。
これらを再確認することが「バリュー」を明らかにすることになります。
ここではビジョン・ミッション・バリューの関係性を見ていきたいと思います。
図で表すと以下のようになります。
企業やその事業のバリュー(独自価値)をベースに、ビジョン(実現するべき将来像)に向かって、決めたミッションを果たしていくという関係性がご理解いただけると思います。
ビジョンやミッションが単なる掛け声やスローガンにとどまらず、社外の人が見ても分かるような具体性を持たせる必要があります。
ここからは、ビジョン・ミッション・バリューを設定するプロセスを紹介いたします。
順番としては、
1.バリューの明確化
2.ビジョンの設定
3.ミッションの設定
といった流れが一般的な設定プロセスになります。
まず、企業やその事業のもつ独自価値を明らかにするところから始めましょう。
独自価値は、「独自性」や「らしさ」と言い換えることができますが、その企業ならではの強みです。
強みを形成しているもの、伝統的に大事にしていることなどを踏まえて再発見していきましょう。
バリューとして明らかにしておくべき項目は以下のような内容になります。
次に、バリューを背景に「実現するべき将来像」をビジョンとして描いていきます。
例えば10年後のビジョンとした際には、10年後の顧客像や顧客が求める価値の変化をよむ必要があります。
また、現在の強みとして生かせる部分と、今後伸ばすべき要素の検討が必要です。
その上で、ビジョンには以下のような項目を盛り込みましょう。
(10年後を想定して)
そして、今度はビジョン実現に向けた「ミッション」の設定となります。
ビジョン実現に向けて、企業としてのミッションを設定する場合もあれば、部門ごとにミッションを設定する場合もあります。
例えば、環境保全をビジョンとして掲げる企業は、〇〇年までにCO2の排出を〇%削減するといったミッションを段階的に設定しています。
また、地域で選ばれる医療機関をビジョンとして掲げる病院では、接遇力の向上や院内連携をミッションとして掲げています。
ミッションは、ビジョン実現に向けた具体的な行動指針と言えます。
ビジョンから一歩踏み込んだ目標設定とも言えます。
ここまで企業のビジョン・ミッション・バリューの意味と設定プロセスについて、お伝えしました。
企業のビジョンを見える化し、社内で共通認識化する取組みがインナーコミュニケーション(インターナルブランディング)です。その取り組みは現在、多くの企業で注目されています。
社内意識の変革から社外認識の向上、商品力、顧客獲得力、リピート獲得力、情報発信力の強化などを、一貫したコンセプトのもとに効果を最大化する事業強化を支援しています。
社内ワークから導き出した「バリュー・ビジョン・ミッション」。それらをベースとした社内意識の変革、事業力、商品力、顧客獲得力の強化など具体的な取組みを推進することが効率的な事業強化となります。
当社では、事業強化の全てのプロセスを一貫してサポートする体制を整えています。
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